巨樹・巨木を訪ねて

 かつて伊豆七島の一つである御蔵島に、オオミズナギドリの繁殖地を訪ねたとき、スダジイの巨樹が生い茂る森に迷い込みました。木の根元の至るところに巣穴があり、夜明けを迎えると同時に、オオミズナギドリが海側に傾いた太い枝によじ登り、海面に落下するように次々と飛び立つ。ほの暗い樹林の中で繰り返される、不思議な光景を呆然と見ていました。

 巨樹・巨木の選定基準は、高さや年齢ではなく太さを重視して、地上高1.3mの幹周りが3mを越えるものとなっています。現在、全国で約68,000本が登録されていますが、奥山にはまだ知られていない巨樹・巨木が、沢山存在するようです。

 巨樹と言えば、屋久島の縄文杉が有名ですが、巨樹ランキングでは12番目で、鹿児島県蒲生町にある幹周り24mの「蒲生の大クス」が1番となっています。上位はクスノキが独占し、次にスギ、イチョウ、カツラが続きます。

 多摩川の上流、奥多摩町には891本の巨樹・巨木が確認され、日原集落には、全国の情報を展示・発信している「巨樹ミュージアム・日原森林館」があります。この付近の山には、関東随一と言われる倉沢のヒノキをはじめ、ミズナラ、トチノキ、カツラなどの巨樹が点在しています。

 日本の神社仏閣の周りは鬱蒼とした森林に囲まれて、荘厳な雰囲気が漂います。古来、巨樹は神が宿るご神木として信仰の対象になり、昔から聖地を守ってきました。樹齢数百年の巨樹を訪ねることは、地域の歴史と文化を学び、心の故郷を訪ねることになります。

(森 孝順)

2013.06.03掲載

新緑がまぶしい九重連山の久住山

 1700m級の山が10座連なる九重連山は、5月の連休明けに鮮やかな新緑の季節を迎えていました。坊がつる讃歌で「ミヤマキリシマ咲き誇り」と唄われていますが、牧ノ戸峠から半時ほど登った南面の岩場の陽だまりに、ようやく数輪の花を見つけました。これから6月にかけて、山肌の全体を覆うように、一気にミヤマキリシマの花が咲き乱れます。

 平安時代に、九州の屋根とも呼ばれているこの山域に、九重山白水寺と久住山猪鹿寺の二つの寺院が開かれたため、北麓に九重町、南麓に久住町(現竹田市)が存在することに。このため地域全体を表現するときに、どちらを採用するか以前から問題となっていました。今では、山域全体を九重連山、主峰を久住山(1786.5m)と表記しているようです。

 かつて「阿蘇国立公園」を改称するときに、苦渋の選択として、どちらにも偏らない「阿蘇くじゅう国立公園」と、ひらがなで命名した経緯があります。そのため、九重、久住、くじゅうの三つの表記が地域で使用されています。

 九重連山は比較的あたらし火山であることから、視界をさえぎる高い樹木がないので、展望に恵まれた稜線歩きが楽しめます。一等三角点のある久住山頂からは、高原状の広大な牧野の背後に、お釈迦様の涅槃像の姿を現す阿蘇五岳や、大分・宮崎県境に連なる祖母山系が遠くに望めます。

 この山域の魅力の一つは、山麓の至るところに豊富な温泉が湧き出していること。下山後に、法華院、筋湯、赤川など、個性のある温泉が待っています。

(森 孝順)

2013.06.03掲載

残雪期の八甲田山

 八甲田山が雪中行軍でしか話題に上らないのはさみしい限りだ。実は八甲田山は山スキーの場としては日本一のロケーションを有している。特にゴールデンウィークの時期は、雪がまだ大量にありながら締まっていて、無雪期は藪漕ぎに苦労するチシマザサも雪に隠れている。

 そこで北八甲田の山麓を一周している車道に車を停め、スキーにシールを履けば自由気ままにどこでも歩くことができ滑りたい山の頂に立つことができる。この時期、ブナなどの落葉広葉樹はまだ新芽も出ておらず見通しがきくので、巨大なオオシラビソの樹間を滑りたいコースで、方法で自由に滑ることができる。雪崩の心配もこの時期はまず無いし、普段はこの時期天気も安定している。

 実はそのはずであったが、今年ゴールデンウィークの八甲田山は例年になく雨または霧が多く、1日も山スキーを楽しむことができなかった。そこで掲載の写真は、2,3年前のものであることをお断りしたい。

(藤田 均

2013.05.10掲載

春の山の恵みをいただく

 春の連休を迎えて、山菜が気になるころとなりました。狩猟採集生活の遠い記憶が目覚めるのか、春の野山に分け入るのが楽しい季節。特に子供たちと一緒に、山遊びをする絶好の機会です。

 高知県で山菜といえばイタドリが一番人気で、誰もが目を輝かせて探し回ります。イタドリを塩漬けや冷凍保存して煮物、油炒め、チラシ寿司の具などで一年中食べています。北海道では、野外楽しむジンギスカンの焼肉に欠かせないのがアイヌネギ(ギョウジャニンニク)、東北地方では、ネマガリダケの竹の子を自家製の缶詰めにして、好きな時に食べています。

 気軽に採取できないこともあり、タラの芽を山菜の王様、コシアブラを山菜の女王と呼んでいるようですが、珍重される山菜は地域ごとに異なります。東京近郊では、春が近づくと先ずフキノトウが話題になりますが、庭先でいくらでも採れる秋田県では、バッケと呼んで相手にしません。

 山菜の好みも人それぞれですが、北海道の千歳に暮らしていた頃、ヒグマに怯えながらも、アズキナ(ユキザサ)の群生地にであうとすごく嬉しかった。山菜とは思えない甘い食感が、今でも脳裏に残っています。

 湿り気の多い水辺では、コゴミ、ウルイ、アイコなどが一斉に芽吹く。日当たりのよい山の斜面には、タラノキ、ワラビ、ウドなどが次々と新芽を出して、採集意欲を刺激します。

 山菜の素晴らしいところは、繰り返し採られても、翌春また出てくる回復力にあります。それでも採取は、程ほどにして持続的に利用するのが先人の知恵。

(森 孝順

2013.05.10掲載

風光る北国の春

 北国の山里の春の訪れは、雪解けとともに突然やってきます。雪しろ水が小さな沢筋にあふれ、山すその用水路から土手をくだり田畑をうるおす。

 山のゆるやかな斜面には、残雪かと見間違うかのように純白のコブシが点々と咲き、さらに少し赤味をおびたヤマザクラの花が追いかける。朝に木々の向こうに透けて見えた対岸の山々が、夕には若葉がすっかり広がって隠れてしまう。浅黄、黄緑、薄紅とそれぞれの色合いを競っていっせいに芽吹き、山笑う季節の移ろいはいつも慌ただしく賑やかだ。

 風光る日差しのもとで、野山をおおう雪が日を追うごとに消えていき、田畑の黒い畦道が目立つようになると、明るい落葉樹の林の下に春の妖精が現れます。最初に大柄な山吹色の花を咲かせるのがフクジュソウ、次にカタクリ、ニリンソウ、キクザキイチゲなどの可憐な花がつづく。足元に一面に咲き乱れるさまは、一瞬、歩み入るのをためらうほどに見事な光景だ。

 これらの美しい花々は春植物と呼ばれ、木々が新芽を広げて日陰になる前に、日の光を求めて真っ先に花を咲かせ、早春の里山を彩ります。その後まもなく地上部は枯れて、夏は地下にひそみ、来春の雪解けをじっと待つ。その短い花の命を蜻蛉にたとえて、「春の儚いもの(spring ephemeral)」と呼ばれています。

(森 孝順

2013.04.30掲載

葉が半分、花が半分の吉野山

 待ち望んだ春は、桜の開花とともに到来します。4月中旬に訪れた奈良県吉野山は、いつもより一週間も早く上千本付近の桜が満開となり、行く春を惜しむ花見客で一杯でした。

 吉野川沿いの下千本から咲き始め、中千本、上千本を経て、山頂付近の奥千本まで、標高差約600メートルを駆け上がります。若葉、葉桜、満開、花吹雪、そして咲き始めの桜まで、訪れる時期に応じて4月末までは楽しめます。

 平安時代の歌人西行法師は、桜に心惹かれるあまり奥千本に庵を結び、桜にまつわる歌を数多く残しています。「なにとなく 春になりぬと 聞く日より 心にかかる み吉野の山」(山家集)など、現代の私たちの桜を愛でる心情に、西行の生き方と和歌が大きな影響を与えています。

 吉野山の桜は、もともと花見のために植えられたものではなく、1300年前、修験道の祖である役行者を開基とする金峯山寺の御神木となり、その後、信者により献木されたことが始まりです。以来、今日まで約3万本のシロヤマザクラが尾根から谷を埋め、まわりの杉木立を背景に咲きほこる有り様は、まさに日の本一の美しさ。

 また、吉野山から修験道の修行の道である大峯奥駈道が、峰伝いにはるか熊野三山まで続くとともに、義経と静御前、南北朝の後醍醐天皇などにまつわる神社、仏閣、史跡が点在して、歴史が育んだ桜の名所となっています。戦前に吉野熊野国立公園に指定され、近年になり「紀伊山地の霊場と参詣道」として、一帯が世界遺産にも登録されています。

(森 孝順

2013.04.19掲載

風が吹くと、薬屋が儲かる? 

 ぽかぽかの陽気がつづき、梅の蕾みがほころび始めると、街角にマスクをする人々が目立つ。これから桜の花が散る頃まで、花粉症に悩まされる人には辛い季節の到来です。

 さらに強い偏西風に乗って、中国大陸から飛来するPM2・5や黄砂も症状を悪化させる要因となっています。いまや5人に1人が花粉症の国民病となり、毎年の医療関係費が約3000億円にのぼると言われ、日本の社会に与える影響も尋常ではない。

 キクやバラの仲間など美しい花を咲かせる植物は、昆虫が訪れて花粉を運ぶので、少ない花粉で効率よく受粉ができます。ところがスギやヒノキに代表される針葉樹は、受粉は風まかせになるため、大量の花粉を空中にばら撒くことに。

 国土の7割が森林、その内の4割がスギ、ヒノキなどの人工林。現代のスギ花粉症の蔓延は、かつての「ブナ退治」に象徴されるように、豊かな自然の森を伐採して、植林地を異常なまでに拡大したことが原因です。

 スギやヒノキを伐採して、ミズナラやカエデなどの広葉樹への転換を図るにしても、長期にわたる木材価格の低迷で、山林地主の動きは鈍い。無花粉のスギ苗の植林なども始められたが、花粉症患者は増加する一方で、焼け石に水の状況が続きそうです。

 国土の保全、生物多様性の保全、自然とのふれあいの場として、ブナ、ミズナラ、カシなど本来の自然の森を、できるだけ早く回復することが、確かな花粉症対策にもなります。

(森 孝順

2013.04.11掲載

奥羽の山にも春のきざし 

 和賀連峰のモッコ岳(1278m)に登ってきました。自宅からよく見える山ですが、ピークまでは夏道がなく、雪のあるうちに登ろうと思ったのです。登り口の西和賀町の貝沢には1m余の雪が残っていました。

 幅広い尾根をスキーで登ります。周りにはブナ林が広がり、自然環境保全地域に指定されています。ブナの木の回りは少し雪が解けかかっていました。ホオノキの新芽は少しふくらみかけ、アカゲラのドラミングが聞こえました。稜線に上がると、巨大な雪庇に割れ目ができて、崩れかかっている所もありました。3時間程でモッコ岳に着きました。風もなく、岩手山や秋田駒ヶ岳は春らしく霞んでいました。

 帰りに沢を渡るとき、スノーブリッジを見つけるのに苦労しました。沢の雪解け水は勢いを増していました。間もなくミズバショウ、カタクリ、イワウチワが咲き出し、本格的な春になります。

(広野 孝男

2013.04.04掲載

阿夫利神社から、残雪の丹沢大山を目指して  

 神奈川県の屋根と言われる丹沢山塊。この山塊の相模湾側に、少し離れて端正な山容を誇るのが、丹沢大山国定公園の大山(標高1252m)です。

 大山は古くから山岳信仰の霊山として、山の神、水の神、そして海洋の守り神として信仰の対象となってきました。特に、江戸の町の発展とともに、庶民の間で「大山詣で」が盛んになり、当時の参詣の賑わい振りを描いた浮世絵も沢山残されています。

 大山は、またの名を「あふり山」と呼ばれ、常に雲や霧を生じ「雨を降らす山」、また「雨乞いの山」として、関東一円の農民からも厚い信仰を集めてきました。山頂には、阿夫利(あふり)神社の奥ノ院が祀られ、その傍らのブナの古木が、「雨降木」の御神木として大切に保護されてきました。

 今回は、大山の中腹の阿夫利神社下社に参詣し、スギ林に囲まれた石段の道と雪の残る登山道を経て、大山山頂を目指しました。途中、眼下に相模湾、遠くに東京都心の市街地の眺望を楽しみながらゆっくりと登りました。  山頂付近では、シカの親子が樹の皮を食んでいましたが、人馴れしているせいか近寄ってきます。丹沢では近年シカの食害が深刻になり、神奈川県は生息数をコントロールするために、積極的に管理捕獲を実施しています。

(森 孝順

2013.04.04掲載

北八ヶ岳縞枯山 ~雪山とバイオトイレ~ 

 11月の下旬に北八ヶ岳に行ってきました。ロープウェイで山頂駅まで登ると、白銀の世界がひろがっていました。

 この日は風もなく快晴で、南アルプスや御嶽山も見ることができました。雪が積もった横岳神社でお参りした後、30分ほどかけて坪庭コースを霧氷に囲まれながら歩いたあと、縞枯山荘でトイレ見学してきました。

 この山小屋のトイレは大小分離式で、ソバガラを使用したバイオ処理を行っていて、臭いもなく快適で、利用者の評判も良いとのことでした。

(神下由子

2013.03.08掲載

冬木立六景 

 山眠る頃、いま森は冬木立の装いです。木々は厳しい冬を乗り越えるために、葉を落して春を待ちます。雪の舞う冬景色には、ヒューヒューと吹きつける冷たい西風がつきもの。この時期の森あるきでは、こずえに積もった雪が木々を揺らす風に飛ばされて、青空に舞い上がる光景に出あいます。

 スリムになった冬枯れの樹木は、枝の広がり方、木の肌、冬芽のつき方などで樹名の見当をつけます。武蔵野の里山を代表する樹木はケヤキですが、箒を逆さまに立てたような樹形なので、遠くからでもよく分かります。

 同じ樹でも生育する環境により、様々に形を変えるので油断はできません。雪の積もるところ、傾斜の急なところ、特に風のあたるところは影響が大きく現れます。富士山の五合目付近のカラマツは、強い風のためにハイマツのように大地にへばりつく。

 森の木々も、与えられた自然環境の中で、お互いに助け合い、時には争いながら成長します。シラカバやカラマツは光を求めて、いち早く天空を目指すので、見上げると気持ちがよい。

 ほとんどの樹木は、日陰で耐えしのぶ期間がはるかに長いので、太陽の光を浴びておおらかに枝葉を伸ばせる樹は、ほんとうに幸せなのです。

(森 孝順

2013.03.08掲載

大滝神社湧水を訪ね、甲斐駒ケ岳の眺望を楽しむ   (山梨)

 新宿駅発7時の中央本線スーパーあずさ1号に乗り、標高881mの小淵沢駅に向かう。途中、列車が甲府盆地に入り始めると、ソワソワとして落ち着きません。大気の乾いた寒い冬は、山の眺望を楽しむ絶好の機会です。

 車窓の左側に鳳凰三山、北岳、甲斐駒ケ岳の南アルプス北部の山並みと、右側に金峰山、国師ヶ岳などの奥秩父の山々、正面に裾野を広げる八ヶ岳連峰がドンドンと迫り、後方に端正な富士山が姿を現します。

 名だたる山が次々と姿を見せるので、しばらくの間、至福の時を過ごすことに。特に、小淵沢付近から仰ぎ見る甲斐駒ヶ岳は、ほかの名峰を凌駕する迫力があります。摩利支天を従えて、ことのほか凛々しい。

 八ヶ岳山麓の小淵沢近辺は、豊富な湧水にも恵まれています。スギの巨木の根元から湧き出す大滝神社湧水は、八ヶ岳南麓高原湧水群として、名水百選に選定されています。

 この名水は、雪化粧をした祠の下から湧き出し、手を入れると少し暖かい。神の恵みに感謝して、ペットボトルに汲んで持ち帰る人が絶えない。

(森 孝順

2013.02.25掲載

天然氷採氷所と宝登山臘梅園を歩く   (埼玉)

 2月1日、秩父鉄道野上駅から、「長瀞アルプス」と呼ばれる尾根を歩き、臘梅がほころぶ宝登山へと向かいました。

 途中、山の中腹に作られ、「氷池」として知られている天然氷の採氷所へと立ち寄りました。プールのような氷池では、約1か月を費やして天然氷を造ります。その間、落ち葉や塵が氷にとけ込まないよう、絶えず箒で掃き、衛生面への気配りを欠かせません。

 棚田のように段違いになっている池には、氷が張っていましたが、手前の池の氷を切り出した後、1月14日の降雪で汚れてしまったため、今年の採氷は終了だそうです。製氷期間中に雪が降ると、その氷が台無しになってしまうということに、驚くばかりです。山の恵みの天然水をいただき、人の手をかけて、天然氷は造られているのですね。

 宝登山山頂に鎮座する宝登山神社の奥宮の前には、御眷属であるオイヌサマの石像があります。オイヌサマは、秩父地方にいたニホンオオカミであるとも言われていて、お札にもそのお姿が刷られています。

 山頂の臘梅園は、3分咲きといったところでしたが、ハイカーも観光客も臘梅の香りを楽しんでいました。

(荻野寿美子

2013.02.25掲載

多摩川の上流、三頭山麓を訪ねて   (東京)

 三頭山(標高1531m)は、都民の水がめと呼ばれる奥多摩湖の南側に位置する懐の深い立派な山ですが、手前の大岳山や御前山と比べて、山容が地味なためか、少し損をしているようです。

 ふもとの奥多摩町側には山のふるさと村、桧原村側には都民の森があり、様々な自然体験を楽しめます。今回は山のふるさと村の快適なログハウスに、一夜お世話になりました。二月の一番寒い時期ですが、週末の宿泊は予約で一杯とのことです。

 翌日、奥多摩周遊道路の最高地点である風張峠から、残雪を踏みしめて三頭山方面に続く、冬木立の稜線を歩いてみました。途中、対岸の雲取山方面の石尾根を覆うように、色鮮やかな虹が現れ、しばらく見惚れてしまう。

 都民の森には、ブナ、ミズナラ、モミなどの良好な自然林が見られますが、所どころ、シカの侵入を防止する柵が設置されています。この付近ではナツツバキの樹皮を、シカは好んで食べていました。シカによる食害は、秩父多摩甲斐国立公園の全域に拡大して、困った問題となっているようです。

(森 孝順

2013.02.18掲載

節分祭の御嶽神社から、奥多摩ビジターセンターへ   

(東京)

 2月3日は節分の日、関東を一望できる武蔵御嶽神社の社殿では、一年の無病息災を祈って、恒例の豆まきが賑やかに行われていました。

 御嶽神社は盗難や魔除けの神として、大口真神(おおくちまがみ)と呼ばれる狼を祀っています。畑を荒らすイノシシやシカを退治してくれる「おいぬ様」としても、昔から関東一円の農民の厚い信仰を集めてきました。

 オオカミが森から姿を消して百年余り、全国各地でシカの食害が話題となっています。天敵がいなくなり、自然環境への影響は不意に現れるようです。

 標高929mの御岳山を下山して、奥多摩駅の近くにある奥多摩ビジターセンターに立ち寄りました。秩父多摩甲斐国立公園の東京都側の玄関口に設置され、自然や登山に関するリアルタイムの詳しい情報を、ここで手軽に得ることができます。

 ビジターセンターでは、ハイキングや自然観察会などの自然体験プログラムも提供していますので、奥多摩の自然を楽しむうえで、まっさきに訪れたいところです。

(森 孝順

2013.02.08掲載

雪山歩き   (岩手)

 久々の晴天に誘われて雪の山をスキーで歩いてきました。網張スキー場の西側にある小松倉山(1241m)に登り、網張スキー場に降りるコースです。このコースに夏道はありません。スキー場を一歩外れると、静かになり、ウサギ、キツネ、テン、カモシカの足跡が目立ってきます。ブナ林のなか、足跡を追うようにして高度を上げます。ウサギの足跡は低い所から高い所まで目立ちます。

 1時間半程で小松倉山のピークに着きました。見慣れた岩手山や烏帽子岳(乳頭山)も角度が変わり、雪の被われて純白になると、新鮮に見えます。写真を撮り、へたなスケッチをします。夏には来られない所からの展望を楽しめることも冬山の魅力かも知れません。天気が良いので少し汗ばみ、お腹も空きました。

 山々を見ながら茶を飲み、行動食を食べます。食べながら、ふと、生き物達のことを思いました。ウサギやカモシカは、細い枝先の冬芽を食べているだけです。雪山を歩き回るには多くのエネルギー消費するはずで、それに見合ったカロリーを得ているのだろうかなどと。

(広野 孝男

2013.02.08掲載

冬の造形美にであう、雪と氷の六景 

 雪と氷の探究者であった中谷宇吉郎は、世界で初めて雪の結晶を人工的に作ることに成功した。「雪は天からの手紙である」と、洞察力のある言葉を残しています。

 天から落ちてきた雪の結晶を観察すると、はるか彼方の空模様が想像できるとのこと。つい、手のひらに受けとめた雪の華を見つめてしまう。

 風あたりの強い山の斜面の木々には、冷たい霧や雲が吹き付けて霧氷が発生。その時々の気象条件によって、様々な造形美を見せてくれます。厳冬期、雪まじりの冬の季節風が針葉樹にぶつかると、モンスターと呼ばれる巨大な樹氷が出現します。

 身近な日常生活にも、氷の造形美は現れます。いつもより冷え込んだ朝、ふと見上げた屋外の窓ガラスに、木の枝葉のように広がる氷の精緻な模様。陽が当たるまでの儚い出会いに、美しさが輝く瞬間です。

(森 孝順

2013.02.01掲載

国設のスキー場だったモラップ山へ  (北海道)

 支笏湖在住の方とする山の話しといえば、モラップ周辺の山の話題が多いような気がしています。

 50年以上前の武勇伝、春の山菜、秋のキノコ、ヒグマとの遭遇、スキー場だった時のこと・・・話題が尽きることはありません。2つある山はどちらも標高500m程度ですが登山道は無く、地元の方々の大切な遊び場といった印象です。

 雪が積もった頃、コース跡地の頂上まで行ってみると、雪原と蒼く美しい支笏湖、湖を取り囲む山々の中心に堂々とした恵庭岳を望むことが出来ます。なんて贅沢なコースだったのだろうと、当時のスキーヤーをうらやましく思います。閉鎖から10年以上が過ぎたいま、コース跡地は木やササの薮となっています。植生が回復しているのだなと思っていたら、その多くが鹿に食われています。

 黙っていれば自然が回復する時代は終わっているのだと実感しました。今後モラップ山はどうなるのだろう?皆で考えなくてはいけない時が来ている気がしてなりません。

(瀬戸 静恵

2013.01.25掲載

山で星を見るひととき  (福島)

 山で見る星空は格別です。とくに街の“光害”も大気中の塵も埃も水蒸気も少ない2,000m、3,000m級の高所では、怖いくらいの闇と吸い込まれそうな星空がまさに非日常の体験をさせてくれます。

 東日本大震災のあと、節電意識の高まりで無駄な夜間照明を消す動きが広まり、都会でも一時的に星空がよく見えた時期がありました。私たちは必要以上に電気を使い、見失っていたものがあったのではないかと気付かせてくれるきっかけになりました。

 私は福島に住んでいますので、天文ファンの聖地ともいえる吾妻山周辺でよく星を見ますが、身近に山があり、美しい星空を堪能できる環境を有り難く思っています。

 星を見る、星を撮ることを目的に山を目指す方も増えてきて、山ガールに続き、宙(ソラ)ガールと呼ばれる女性天文ファンも現れています。今年(2013年)は肉眼で見える大彗星の出現も期待されています。星を見に山へ出かける楽しみ方が流行りそうな予感がします。

(西村 真一

2013.01.25掲載

冬ならではの、山の楽しみを求めて 

 日本列島は、冬の真っただ中。雪国に暮らす人々にとっては、来る日も来る日も、絶え間なく降り積もる雪との闘いとなります。

 東北の山村に生活していた頃、軒先にはみ出した雪庇状の塊が、突然、全層雪崩のように落下、胸まで埋まってしまったことも。除雪は、毎年繰り返される宿命の営みです。

 都会に住む人々には、想像できないような苦労がある反面、冬ならではの楽しみもあります。大地が真っ白い雪に被われ、灌木やササ類が雪の下になり、どこでも歩ける雪原の出現。抜けるような青空の下、明るく見通しのよい森の中をただ彷徨するだけで、何とも言えない、解放された気分を味わうことができます。

 雪に被われる冬は足が遠のきがちですが、自然の厳しさとともに、楽しさを体感できるスノーシューやスキーも活用して、この季節限定の、素晴らしい雪景色を見に野外に出てみましょう。

(森 孝順

2013.01.25掲載

樽前山の麓を歩く  (北海道)

 冬の樽前山といえば、一面が雪に覆われた風景を湖畔から眺めるのが定番です。

 一方夏は7合目まで車で行くことができるとあって、麓の風景は車窓からサラリと流し、上から湖畔を眺めることが多いです。冬に樽前に登ろうと思うと1合目から歩かなくてはならず、足が遠のきます。

 しかし実は5合目までの約3キロ、樽前山はエゾマツやトドマツの北海道らしい美林を眺めながら歩けるのです。 道の上には樽前山の管理人さんが使用したスノーモービルの跡や、クロスカントリースキー、スノーシュー、私は長靴の跡を残して歩きました。もちろん、動物の足跡もたくさんあります。エゾユキウサギ、テン、エゾリス、ネズミ、エゾシカの足跡が確認できました。人や動物の足跡があるだけで、なんだかワクワクします。

 広葉樹の林では野鳥に出会えました。ウソが数羽イワガラミの実をついばんでいました。その近くで、アカゲラが樹皮を懸命にはがしています。昆虫でも探しているのでしょうか。ゆっくり観察させてもらいました。立派なマツの木にあけられた大きな穴を見つけると、クマゲラに会えるのでは?と期待しています。

 5合目よりも先、頂上を目指すには本格的な冬山登山の準備が必要ですが、頂上を目指さず、木々や生き物を観察しながら山道を歩くのも楽しいのです。冬山に自信が無い方も生き物たちに会いに、ちょっと出かけてみてはいかがでしょうか。

(瀬戸 静恵

2013.01.18掲載

冬に咲く氷の花、雪寄草のマジック  (東京)

 都会に近い奥多摩の山々では、落ち葉の吹きだまる山道を歩く季節の到来。地上に落ちて、大きく目立つのがホオノキの灰褐色の朽ち葉、道を外して林の中を歩くと、パリパリと乾いた音をたてるミズナラの枯葉。冬の落葉樹林は、明るく見通しがきくので、どこを歩いても気持ちがよい。

 柔らかい木洩れ日を浴びながら山道を辿ると、ほの暗い斜面に、白いハンカチを落としたように、美しい氷の結晶の散乱している光景に出合う。別名、雪寄草と呼ばれるシモバシラの茎から浸みだした水が、夜間の冷え込みで、氷の花を咲かせたもの。

 夏の終わりの頃、高尾山の一丁平付近の日陰の斜面に、白い花を沢山咲かせているシモバシラ。厳しい冬を迎えた早朝、立ち枯れた細い茎の根元に、見事な霜柱のアトラクションを演出する。自然の絶妙な造形美と、それが植物の名前の由来であることに納得する。

(森 孝順

2013.01.18掲載

スキーツアー  (岩手)

 おだやかな天気が期待されたので、初滑りならぬ初ツアーに行ってきました。網張スキー場から大松倉山(1407m)を越えて三ツ石避難小屋までのお気に入りのコースです。

 静かな純白の雪原を、動物の足跡を追いながら自由に歩くことは、大きな魅力があります。夏には行けない所にも行けて、夏には見逃しがちの風景にも出会うことができます。

 十和田八幡平国立公園の八幡平地域は、なだらかな地形が多くアオモリトドマツは樹氷に被われます。スキーツアーコースも整備され、古くから利用されてきました。そのツアーコースも標識が古くなったり、コース内の木が成長し、コースが分かりにくくなっている所が目立ちます。登山路の維持管理は大変なことですが、スキーツアーコースも定期的な手入れが必要となっています。

(広野 孝男

2013.01.11掲載

スギの樹皮下にタマムシ  (神奈川)

 寒い冬、しかしこの時期だからこそ出会うことのできるタマムシを探しに丹沢山へ。ところでみなさん、タマムシと聞いてどんな姿を思い浮かべるでしょうか?あの虹色に輝く「玉虫」を想像してしまいますよね。しかし今回探しに行ったトゲフタオタマムシはとても地味な色をしているんです。

 幼虫はモミの枯れ木を食べるのですが、成虫は秋に羽化してスギの樹皮下に潜り込み冬を越します。ということはモミとスギが一緒に生えている場所に行かなくてはなりません。

 地図で目星をつけておいた山へ入り、彷徨うこと一時間、モミとスギの混交林を見つけました。さらにスギの樹皮下をチェックしていくこと一時間。樹皮一枚下に楕円形の物体が・・・ようやくトゲフタオタマムシに出会えました!寒い中苦労して見つけた瞬間は感無量、思わずガッツポーズをとりました。鈍い金属光沢が放つその輝きは、虹色に輝くタマムシとはまた違った魅力。一本のスギの木の前に座り込み、自然の造形美にしばし酔いしれました。

 樹木の樹皮下には様々な昆虫が身を隠しています。今回出会うことができた他の昆虫たちも写真にて紹介します。 

(須田 淳

2013.01.09掲載

山びとが一息つく憩いの場、湧水六景 

 昔から、岩間から流れ出る清水を、「石走る垂水の水」と詠んだように、我が国は、美味しい水をどこでも飲むことができます。

 近頃、汚染された湧き水を心配して、ペットボトルを持参することが多くなったが、山歩きの楽しみの一つは、渇いた喉をうるおす清水に出合うこと。まったく水気のない山道で、不意に現れた冷たい清水ほど嬉しいことはない。

 東京都民に飲み水を供給する多摩川の源頭は、奥秩父の連山の一つ笠取山(標高1953m)の山頂直下にあります。水干(みずひ)と呼ばれる岩の隙間から浸みだした水滴は伏流して、数十メートル下のガレキの間から勢いよく湧き出してくる。東京湾まで138キロの旅は、水神社の祭られた岸壁のこの一滴から始まります。

 この笠取山の雁峠側の小さな丘に、多摩川、荒川、富士川の3つの河川の分水嶺を表示する石柱があります。 

 山麓の人々に恵みをもたらす湧き水は、水の神として昔から大切にされてきました。山を守ることは、水を守ること、そして多様な生命の源を守ることになります。 

(森 孝順

2013.01.09掲載

山紫水明に遊ぶ、巡りあいの滝六景 

 「これは川ではない、滝だ!」 これは明治初期に常願寺川の治水の技術指導に招かれたオランダ人のデ・レイケの言葉として流布しています。言葉の真偽は別として、3000メートル級の立山連峰から、50キロメートル余りで富山湾に注ぐ急流を見て驚いたに違いない。

 ゆく河の流れに人の世の変転を重ねる我々と、滔々と流れる大河を見て育った大陸人とでは、川へのイマジネーションは相当異なろう。

 渓谷美に恵まれた我が国では、山河のいたるところで魅力的な滝に遭遇します。昔から有名な滝は、それぞれ独特の風格を備えており、地域の歴史と文化を語るうえで一見に値します。

 旅先で偶然に出会った滝が、日本の滝百選の一つであることが分かり、俄然、親しみがわいてきます。優れた景勝地には滝があり、その滝の上流の彼方に想いを馳せる山人も多い。 

(森 孝順

2012.12.21掲載

窮屈な住み場 

 日本各地で獣害が問題となっておりますが、箱根山も例外ではありません。最近はシカの樹皮剥ぎや林床の植物の食痕も数多く確認されています。

 そしてイノシシ、ここ数年地面を掘り起こした痕が急激に多くなってきました。先日も若いイノシシが私の姿を見ても恐れず、夢中になって土を掘り起こしている場面に出くわしました。野生を忘れてしまったのか、それとも食べ物を必死になって探していたのかわかりませんがその姿を見て、本来の自然生態系が失われていく危機感を感じました。

 イノシシの数が増えた・・・ということが、イノシシが里に下りてきた理由の一つになっております。しかし、もともと山に住んでいたのは彼ら野生動物です。そこに人間が入ってきて山を削りどんどん道路を造り建物を建てる。これでは野生動物たちが狭くなった山からあふれ出てしまって当然ではないでしょうか?

 といっても、人間が開発した土地から出ていくわけにもいきません。これから彼ら野生動物たちと永く付き合っていくには様々なことを試みなくてはなりません。例えば適正な頭数の狩猟、捕獲。荒れてしまった人工林や畑地の本来の機能の回復。他にもやるべきことはたくさんあります。そしてなにより多くの人がこの問題について深く考え、行動を起こすことが大切かもしれません。

 

(須田 淳

2012.12.21掲載

富士山六景 

 見通しのよい冬木立の稜線を歩いていると、突然、目の前に白銀に輝く富士山が現れて、一瞬ドキッとします。今、富士山の眺望を一番楽しめる季節です。

 どの方角から撮影しているのか、写真で見分けることの難しい山の代表。端正な富士山でも、見る方向により山頂部の形が微妙に変化する。特に、静岡県側の大沢崩れと山梨県側の吉田大沢の位置、宝永火山などの寄生火山の配置などで見当をつけることができます。

 富士山は、昔から磁石のように日本人を引き付ける魅力的な山。最盛期には1日1万人以上、夏のわずか2ヶ月余りで30万人を超える。4000メートル近い山を、老人から子供までが登る世界でも珍しい山です。

 近年、汚い、臭い、暗いと評判の悪かった山小屋のトイレも急速に改善されて、若い女性や外国人の登山者も増加しているようです。

 

(森 孝順

2012.12.13掲載

かくれみの術? 

 ちょっと変わった昆虫を探しに伊豆半島に行ってきました。伊豆半島を北から南へ縦断し、到着したのは鬱蒼とした照葉樹林、そして眼下に広がる太平洋。

 今回探したのはカクレミノという植物の枝に化けて冬を越すというちょっと変わった生態のカミキリムシ。その名も「タテジマカミキリ」。

 1時間ほどカクレミノの木を上から下まで隅々まで探し、何本目だったでしょうか。ようやく発見しました。写真のとおり触覚をまっすぐピンと伸ばして完全に枝になりきっているタテジマカミキリ。この姿勢のまま来年暖かくなるまで身を隠していることを考えると、なんて健気な虫なんだろうと感心してしまいます。

 2時間ほど山の中を歩き4匹と出会うことができました。伊豆半島の自然に感謝。

(須田 淳

2012.12.06掲載

歩こう、自然と文化をめぐる関東ふれあいの道

 1都6県を一周する関東ふれあいの道(首都圏自然歩道)の紹介です。関東各地の山域、里地・里山・里海を巡り、地域の歴史と文化遺産とふれあうことのできる長距離自然歩道です。

 10キロ前後に区切った日帰りコースが、歩く人のレベルに応じて160コース設定され、若い人から中高年の人まで四季折々楽しめます。

 東京都八王子梅の木平を起終点に、高尾山、秩父、妙義山、赤城山、筑波山、霞ヶ浦、九十九里浜、房総、三浦半島、丹沢などをぐるりと一周する総延長約1800㌔の自然歩道です。各都県コース、全都県コースの踏破で記念バッジがもらえます。

(森 孝順)

2012.12.06掲載

里山の秋の恵み

ソバの実、干し柿、ナメコ、シイの実

 身近な秋の里山は収穫の季節です。山村の貴重な穀物であるソバの実やヤマグリ、クルミ、ヤマブドウなどの木の実の他、落ち葉を踏みしめて出合うキノコ類は、春の山菜とともに、山里に暮らす人々の楽しみの一つとなっています。

 秋の山村風景を代表するものとして、青空に黄金色に輝く鈴なりの柿の実があります。大陸の寒気団が襲来して、枯らしが吹き荒れる頃、軒下に吊るされた赤い干し柿を見るとなぜか嬉しくなる。

 暖かい地方の里山では、カシやシイの実であるドングリが沢山落下して、リスやネズミの冬越しの餌になる。ドングリの中でも、シイの実は縄文時代から人々に食されてきました。フライパンで炒ったシイの実は、柔らかくて殊のほか美味しい。

(森 孝順)

2012.11.28掲載

手入れを待っている多摩地域のスギ、ヒノキの植林地

 学生時代に通った奥多摩の山々は、数十年の歳月を経て山の風景が大きく変貌しています。戦後、木材需要に応じて植林されたスギ、ヒノキが伐期を迎えて、針葉樹のトンネルの中を歩くような登山道が多くなりました。

 日本の国土の7割は森林であり、その4割はスギ、ヒノキ、カラマツなどが植えられています。木材価格は、昭和55年当時の半値以下に、賃金は2倍以上になったため、伐りたくても伐れない状況が続いています。

 人の手により植えられた木は、畑の作物と同様に手入れが必要です。しかしながら、採算が取れないために間引きが行われず、モヤシのような森林が目につきます。私たちの暮らしを守る森林の公益的機能が著しく低下しています。植林された樹木は、どんどん伐って使いましょう。

(森 孝順)

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霧氷に被われた晩秋の赤城山頂

 前橋市郊外を通過する関越自動車道から、前方に展開する赤城山の優美なすそ野は、富士山に次ぐ広さを誇示しています。

 大沼湖畔の赤城神社に近接する登山口で降車、赤城連山の最高峰である黒檜山(1827m)を目指す。途中、シカの甲高い鳴き声に驚きながら、急登1時間半で霧氷に被われた山頂に到着。ツツジやダケカンバに凍り付いた霧氷が、強風にバラバラと落下して、顔にあたり痛い。谷川岳方面から飛散する風花に陽が差して、谷間に虹が発生している。帰りは、駒ヶ岳方面の穏やかな稜線歩きを楽しみ、ミニ尾瀬と呼ばれる覚満淵の横に降りました。

(森 孝順)

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奥多摩で子どもたちと自然を満喫しました♪

  秋のはじめの週末、20人の子どもたちとその家族、総勢50人ほどで奥多摩でキャンプをしました。山を歩きながら、山里の草花に惹かれた子どもたち。各人、たくさんの葉っぱや花を標本作品にしました。

 長い階段に昇りも降りも楽しそう。雨の後で滑りやすく、小さい子の手をひきながら、子どもたちなりに一段一段慎重に歩いていました。

 あいにくの雨で、翌日のカヌー体験はできませんでしたが、しっとりした緑を満喫し、のんびりした山遊びができました。

(灰谷香奈子)

奇岩巨石の瑞牆山を目指して

  高速道路とコンビニの発達で、思い立ったら直ぐに登れる日帰り圏の山々が増えました。奥秩父の金峰山、瑞牆山などもその恩恵を受けています。

 連日の秋晴れに誘われて、奇妙な岩峰に囲まれた瑞牆山に向かう。富士見平の冷たい湧水を汲み、明るいカラマツ林に囲まれて、静かにコーヒーを楽しむ若者達が羨ましい。山頂からの360度の展望を充分に堪能して下山。山里の名湯、増冨ラジウム温泉で疲れを癒して、紅葉真っ盛りの本谷川沿いに須玉ICへ。途中、甲府盆地の背後に、鳳凰三山のシルエットが見事。

(森 孝順)

桧枝岐のブナの黄葉が見事です!

  10月下旬、沼山峠付近のブナ、ダケカンバの原生林は、大陸からの寒気に包まれて、ここ数日間で、いっきに黄葉の最盛期を迎えました。地元の人の話では、今年は降雨量も少なく、例年より10日程度遅れているそうです。

 早朝、御池に駐車していた会津バスのフロントグラスは、粒々の固い霜で覆われていました。尾瀬沼の山小屋も、黄金色のカラマツに囲まれて、冬支度の真最中です。同行者は、道の駅でキノコやサルナシなどの山の幸を沢山仕入れて、得意満面の様子で帰路につきました。

(森 孝順)

高尾山頂に立派な公衆トイレの出現!

  10月中旬、高尾山の紅葉もススキも秋の気配を漂わせていました。今回は、いつもと違う谷沿いのコースから、薬王院を目指して登りました。

 歩道の入口付近で、赤い帽子を被った七福神が登山者を迎えていました。お馴染みの烏天狗で有名な高尾山神社に参詣。山頂に建設されたきれいな公衆トイレに感心。広場で保育園の幼児が、賑やかにお弁当を広げていました。帰りは、小仏峠まで秋の日差しを浴びてのんびりと歩いてきました。

(森 孝順)

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残暑の尾瀬ハイキング

 

 残暑が厳しくも、尾瀬ヶ原を駆け抜ける風は爽やかな心地よさでした。暑い中、途中で飲んだ石清水の味は忘れられません。

 大清水の登り口からスタートし、見晴の山小屋にて一泊。翌日に尾瀬ヶ原を通り、鳩待峠へと降りました。ちょうど花の季節の変わり目だったので歩いている人は本当に少なく、シーンとした静寂な尾瀬の湿原が印象に残っています。 これから紅葉で色づく尾瀬を想像すると、また訪れたくなります。

(9/16-17 加藤)

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真夏の西沢渓谷は気温18度!

  8月最後の週末に、30年ぶりに山梨県の笛吹川上流部にある西沢渓谷を歩いてきました。次から次へと現れる変化に富むきれいな滝を楽しみながら、帰りは森林軌道(トロッコ)跡を歩いて、入口の駐車場に戻りました。

 一周約4時間のコース。地元の歩道管理組合により、転落防止のための柵や公衆トイレが維持管理されていました。家族連れや中高年の団体で賑わっていました。山梨名物の美味しい「ほうとう」を食べて帰宅しました。

 (森 孝順)