憲章解説

(憲章とは何か)

欧米の憲章(Charter)は、為政者と市民との契約内容を明確にして、現実的な効力を想定している。日本の憲章は、共同体の構成員相互の連帯感や共感を醸成することに主眼があり、法的な規制力を担保していない。市民憲章、大学憲章、企業憲章など様々な憲章がある。関連する憲章では、自然保護憲章、富士山憲章、磐梯山憲章、屋久島憲章などがある。一般に、簡潔な表現で、肯定的な目標を掲げる例が多い。

 

(「山はみんなの宝」憲章の内容)

 

1.憲章前文の内容

(1)私たち国民のすべてが、山(高山から里山まで)の恵みを受けていること

(2)山が果たしている様々な役割、機能についての言及   

(3)山で起きている問題の例示と、それらの課題にみずから取り組むこと

(4)「山はみんなの宝」として、次代に継承すべき共有財産として憲章を定めること

 

2.憲章条文の内容

今まで議論されてきた内容を踏まえて、次の5項目の行動指針で構成する。

○ 私たちの責務

 我が国の7割近くは山であり、山は国土の骨格を形成し、美しい日本の山は世界に誇る国民の共有財産(みんなの宝)である。この山の自然と文化を守り、次代に引き継ぐことが、「私たちの責務」であることを提唱する。

○ 利用者負担

山を楽しもうとする利用者を受け入れ、自然環境を保全していくためには、費用がかかる。この費用を誰がどのように負担していくか重要な問題である。登山道や公衆トイレなどのインフラは、国や地方自治体が整備し、その恩恵(サービス)を直接受ける利用者に、し尿処理、登山道や避難小屋の維持管理などにかかる費用の一部について、何らかの方法(チップ、使用料、協力金、募金など)で、応分の「利用者負担」を求めるものである。また、自然環境の保全や施設の維持管理について、ボランティア活動の一環として、利用者が積極的に取り組むことを提唱するものである。

○ 自己責任

 自然の厳しさを体験するための登山は、当然「自己責任」を前提に行うものとの共通認識がある。他方で、中高年の登山者の増加を背景に、安易な遭難事故が多発する傾向にある。ここでは、山菜採りや渓流釣りなども含めて、幅広く山に入り活動する人々に、「Enter At Your Own Risk」のもとに、自分の身は自分で守り、自己の責任を自覚して行動することを提唱し、この概念を広く世間に普及していくものである。

○ 環境教育

 次の世代を担う子どもたちに、豊富な自然体験の機会を提供することが重要である。子供のころの自然体験が、危険を予知し自己を守る力、生きる知恵を養い、将来、山を思いやる人づくりにつながる。我々大人が、子供たちを登山やキャンプに誘い、自然の厳しさとともに、自然の中で遊ぶ楽しさを伝える「環境教育」に取り組むことを提唱する。

○ 入山者の行動指針

 山域の特徴を反映したローカルのルール&マナーである「入山者の行動指針」は、地域の関係者が主体的に制定していく。全国の山域において、「入山者の行動指針」が作成されることを支持し、「山はみんなの宝」憲章とともに、山の自然環境保全と適正な利用の普及啓発に努める。