憲章制定に至る経緯

 

 20106月に行われた環境省内部の事業仕分けで、山岳トイレ整備の補助金が廃止の判定となった。この廃止判定に危機感をいだいた山小屋関係者や山岳関係団体のメンバーが中心となり、山の自然環境保全と適正な利用の問題を広く世間にアピールするために、「山はみんなの宝」のタイトルを掲げて、同年7月と11月に全国大会を2回にわたり東京で開催した。

この大会では、高山植物の盗掘、シカの増殖による食害、登山道の整備と入山者の自己責任、山のトイレの現状など、国内の山域で起きている様々な問題について情報交換を行った。特に、山の実情を十分把握・理解していない事業仕分けへの批判が集中すると同時に、山の恩恵を受けている側も応分の負担をすべきことや、ルールとマナーについて、入山者に自覚と責任を求めるべきではないかなどの厳しい意見が出された。

 

 それらの意見の総意は、20101130日に開催された「山はみんなの宝!全国大会」において、行動指針(国民憲章)の制定を目指すこと」とする宣言文が、参加者一同により採択された。

このような運動の広がりを受けて、環境省側もあらためて山岳環境の保全について再検討を行い、当面、山岳トイレ整備の補助制度を継続することとなった。

 

 全国大会の事務局を務めた「NPO法人山のECHO」が、平成23年度の地球環境基金の助成を受けて、山の自然の保護と利用の状況について、地方公共団体、山岳・自然関係団体、山小屋、企業等にアンケートを実施した。また、石鎚山(愛媛県)、早池峰山(岩手県)、広河原(山梨県)、上高地(長野県)の4カ所において、入山者アンケートとワークショップを開催して、広く山に関わる人々の意見を聴取した。

その結果、①全ての国民が山の恩恵を受けていること、②山を利用する側もチップや使用料などで応分の負担をすべきこと、③山の利用は自己責任が前提であることを徹底すること、④地域の山ごとにマナーとルールを制定すべきことなどに、意見が集約された。

 

 これらを踏まえて、憲章の名称は高山から里山まで、山の恵みを国民全体が受けていることや、山に入り活動する幅広い人々を包含するものとして、(「山はみんなの宝」憲章)が採用された。また、行動指針となる条文は、全国に共通する内容として、「私たちの責務」、「利用者負担」、「自己責任」、「環境教育」、「入山者の行動指針」の5項目が採用された。

 

 

今回、大会開催の事務局を務めたNPO法人山のECHOが、地球環境基金の助成交付を受けて、関係者のご意見をいただきながら、憲章の制定を目指しているところである。